時の流れによるリスクを考える
語聴覚士の奥住啓祐です。
以前の記事で
脳血管疾患により舌に麻痺が生じたい
現在の舌機能=本来の舌機能 − 麻痺-α(?+?・・)
と仮定し
また病前の機能といっても必ずしも正常とは限らないため
本来の機能=獲得された機能−加齢に伴う変化−β(?+?・・)
と考え
実際に病前から誤った嚥下パターンだった場合
現在の舌機能=本来の舌機能 (=獲得された機能-加齢に伴う機能低下-β(?+?))− 麻痺による機能低下-α(?+?・・)
と書いてきました。
さらにこのαやβに
低栄養や頸椎疾患などが入ると
より舌の機能に対してネガティブに影響を及ぼしている可能性がでてきます。
要するに脳血管疾患の方に対する評価から
AMSDで舌の機能低下があると認められた場合であっても
舌に対して影響を与えている因子はいろいろある可能性があるということ。
ある時、病気を発症し
急性期、回復期と言語訓練を継続し
・安全に常食摂取できるようになる方
・何かしらの介助があれば食べられる方
・誤嚥はしてるけど何とか食べられる方
いろんな方がいらっしゃいますが
退院した後もその方の生活は続いていきます。
そして人それぞれ様々な変化も起こってきます。
疾患による影響+加齢による変化
そもそも疾病後遺症による嚥下機能低下がある中で、食事を行っており
さらに何十年と生きていく中で加齢により機能は徐々に低下していくでしょう。
仮にどの機能が低下したら誤嚥や窒息のリスクが増すか考えてみましょう。
変化するネガティヴ因子としては
・加齢による変化(筋力低下、歯の欠損、認知機能低下など)
・疾患の増悪
・服薬による影響
・生活における体の習慣(姿勢保持能力の変化など)
・介助者を含めた、環境因子の変化
・栄養状態の悪化
・自律神経機能
これら変化要因が加わる事は必然
例えば舌の運動や知覚に問題がある状態で
歯の欠損により総義歯となると
さらに上顎など口腔内の感覚が遮断され
咀嚼時の食塊形成により影響を与えるでしょう。
ただ悪いことばかりとは限らず
逆に変化するポジティブ因子としては
・地域の専門スタッフの増加
私自身、地域で言語聴覚士として働く中で、
絶食状態から胃ろう抜管し常食摂取に至った方
ペースト食から常食摂取になった方
食事介助から自立になった方
など多く経験する中で、今後地域に言語聴覚士が増えることで食べられなかった方が食べられるようになる、もしくは出来るだけ長く食べる楽しみを維持できる方が増えると考えています。
摂食嚥下だけでなく構音障害でも発症から5年以上たってても介入により発話明瞭度が変化する方もいらっしゃいます。
・より良い嚥下食の開発
病院では細かな食形態の配慮が出来たけど、退院したら、、、という方。
ここ数年で嚥下食もどんどん改良が進んでいて、
地域のスーパーでも嚥下食コーナーが設置されているのを見ることも増えました。
他にはどの様な因子があるでしょう。
日ごろからいろんな角度から考えていると
一見摂食嚥下とは関係なさそうな事でも
素早く関連付けられ、専門職種としての介入や助言ができると思います。
さて私も最近、英語論文を読むことをさぼっていたので
またコツコツ頑張りたいと思います。
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今年も全国で
言語聴覚士のためのSTセミナーを今年も開催予定です。
5年目の今年はどのような内容になるでしょう
(ST受講者の声 13年目 言語聴覚士)
私自身、疲れてくるとむせたり、飲み込みにくく舌骨上筋群の硬さが辛かったのですが、2日間のセミナーが終わる頃には、硬かった緊張も緩み、楽になりました。
臨床では以前から、〇〇が出来ないから〇〇の訓練をすることに疑問を感じていました。セミナーを受け、少しは胸から上だけでなく、体全体を見れるようになったのでは。体の事に関心がもてたのでは?PT.OTとも話ができるかな。
また効果が短時間で出たことは驚きました。人数もちょうど良く、先生が丁寧にまわって教えてくれたこと、先生のスピリチュアル的な話が聞けたことも良かったです。
(6年目 言語聴覚士)
セミナー受講前は筋を触ることに抵抗があった。PTさんと患者さんについて議論する自信がなかった。身体と声、嚥下の分析ができないことなど困っていた。
今回、まず「考え方」の練習をいっぱい出来たことで、評価していく視点が明確になった。また効果を”自分の体”で実感出来たことは期待以上でした。
[ 9年目ST]
構音障害のある方に対して、教科書的な訓練を行っていましたが、良くなりきらない方が多く、あまり手応えを感じにくい状態でした。
今回のセミナーは自身の考え方ががらりとかわる内容でした。すぐにでも臨床に試したい内容で明日からの仕事が楽しみになりました。
自分自身の声や姿勢が変わった事、自身の腹部を意識できた事、もっと体の動きや変化に意識を向けなければならないこと、視点が変われば様々なアプローチがあることなどの事を実感できました。
奥住啓祐
言語聴覚士 メンタルヘルスⅡ
過去開催したセミナー
・STセミナー(呼吸発声編、摂食嚥下編、セラピストの体作り、頭蓋)
・社会福祉法人の職員むけセミナー(摂食嚥下、失語症)
・訪問STについて
・疾病予防について
・自律神経の見える化の意義
・自律神経調整法について
・パーキンソン病と摂食嚥下障害